摩擦を制御する~自己治癒力を持つ超低摩擦機械システムをつくる~

機械システムコース / 教員

足立 幸志


2023.04.07

摩擦を制御する~自己治癒力を持つ超低摩擦機械システムをつくる~

凍った道を歩くのは怖く、自転車でブレーキをかけると時に耳障りな音がします。私たちは毎日を安全であり快適に暮らすために“摩擦”と無縁ではいられません。そして安全で快適な生活のための機械も“摩擦”と無縁ではいられません。機械は要求される機能を発現するために必ず動く部分があり、そこには “摩擦”が存在します。機械の性能の劣化や故障、寿命の原因の75%はその摩擦部にあり、自動車の場合、摩擦による損失は全エネルギー損失の約30%に達するといわれます。普段は、あまり意識されていない“摩擦”は、機械における機能の高度化、信頼性、耐久性、安全性、快適性の向上、さらにはエネルギー損失低減による低炭素社会の実現の鍵を握っています。
人間は、怪我や病気に対し、生まれながらにして自然に治す力を持っています。自己再生機能と自己防衛機能に代表される自己治癒力です。もし摩擦面に自己治癒力を持たすことができれば、「劣化、故障、寿命」という概念を覆す新しい発想の機械を生み出すことが可能になります。

私たちの研究室では、機械に使っている「潤滑油」を「水」に変えることができそう、窒素や水素のガスを吹き付けたり、表面を少し温めたりするだけで超低摩擦が発現する、ナノメートルオーダーの凸凹を付与することによって摩擦性能が10倍良くなる、さらには、自らの摩擦力によって超低摩擦を発現する界面を継続的に自己形成させられそうといった摩擦制御に係る様々な現象を発見しています。そのような現象を解明しながら、産業機械をはじめ医療機器や宇宙機器等での利用を視野に入れた「自己治癒型超低摩擦機械システム」の構築を目指しています。摩擦面も、そこに発生する摩擦も誰にも見えませんが、深く入り込めば、安全安心な社会や持続的発展を可能にする社会の構築に貢献し、さらに世の中を変えられるものづくりが見えてきます。身近にあるのに知られていない、とても魅力的な世界です。

プロフィール

足立 幸志

大学院 工学研究科 機械機能創成専攻 教授

Laboratory Website:http://www.tribo.mech.tohoku.ac.jp/index.html