資源ロスやエネルギーロス無く、機能性材料を開発・応用する技術開発

エネルギー環境コース / 教員

高橋 英志


2024.01.12

資源ロスやエネルギーロス無く、機能性材料を開発・応用する技術開発
放射光施設 (SAGA-LS) での実験風景(高橋教授、横山助教、修士2年 池谷さん)

——研究分野と目下取り組んでいる研究について教えて下さい。

現在、我々が直面している環境問題の解決や持続可能な社会を構築することは、現代に生きる我々が次世代に対して負うべき責務であると言えます。この様な考え方は、次世代の産業構造においてSDGsやESG (Environmental Social Governance) を強く意識して研究開発を押し進めなければならないことを意味します。我々一人一人が、その様な環境対策の意識や意義を十分に有することが必須の社会となっていることを、それぞれがしっかりと意識することが大事であると我々は考えております。

この様な観点から、我々高橋(英)・横山研究室では、幅広い環境対策技術分野において、省資源・省エネルギー・低環境負荷な条件下で、簡素な装置のみを用いて、「塗布で太陽電池を創りだすための技術開発」や「塗布でタッチパネルや導電性基板等を創りだすための技術開発」、「ウィルスや有用/有害金属イオンを簡単迅速に回収するための金属材料合成技術開発」などを主体に研究開発を進めております。

膨大なエネルギーや資源ロスをしながら高機能材料を作る事は比較的簡単にできますが、その様な技術開発では真に環境負荷を低減した素材形成及び応用技術の研究開発とは言えません。そこで我々の研究室では、“現代の錬金術”を目指し、常温程度の水溶液中における金属イオンの存在状態および還元電位を錯体形成過程の制御を通じて制御し、環境負荷の低い還元性試薬等を用いてナノ材料合成を行う事で、資源ロスやエネルギーロスが無く、簡単簡便に、常温程度の水中で、機能性材料を開発し、それを応用する技術開発を試みております。 

君たちが我々の研究室に所属し、一緒に研究できる日を楽しみにしております。

ラボでの実験風景(横山准教授、修士2年 野田さん)

——それらの研究に取り組む理由を教えてください。また、研究が成功したらどのように世の中が変わりゆくでしょうか?

機械知能・航空工学科は非常に大きな分野をカバーする学科です。そうである以上、環境に対して非常に大きな責任を負うべき学科と言えます。“環境に優しい”と呼称される最終的なプロダクトを創りだすことも環境対策技術の一つです。しかしながら、その様なプロダクトが真の環境対策技術となるためには、「その製品を創りだすために必要な要素・プロセスすべて」に対して、十分に配慮した考え方が必須です。単なるパーツの寄せ集めのみで達成できる訳では無いのです。

例えば、“環境に優しい”製品を創りだすためには先進技術開発のみが必要なのではなく、最上流の資源探査・開発から、環境保全・修復技術開発、省・創・蓄エネルギー技術開発、循環社会形成技術、など幅広い分野で、十分に環境対策の意識を取り入れなければなりません。

将来、世界の基幹産業を担う人材にこそ、エネルギーや環境に関わる持続可能な社会の構築に対する深い洞察力が必要となります。これこそが、我々エネルギー環境コースが機械知能・航空工学科に所属している意義であり、我々は学生諸君がこのような知識と問題解決能力を提供できるよう、共に学び成長してゆくことを目指しております。

2023年度 高橋(英)研究室メンバー

——これから大学を目指す方に求めることや、高橋(英)・横山研究室の特色を教えて下さい。 

耳障りの良い表面上の環境技術ではなく、真の意味で環境問題を理解する意識を有し、その解決手法の立案・作製に対して多角的な視野を持ち、実行することに対して充実感を得られる様な学生諸君を求めております。もちろん、最初からこれらの素養を身に着けることは容易ではありません。我々と共に学び、考え、実施するうちに、それらの素養を自身の中に構築し、我々と共に成長してゆくことを期待しております。

我々の研究室では、研究活動を通しての成長のみではなく、学会参加を通じて本人の知見や意識が更に飛躍を遂げることを期待し、国際会議(主に米国・欧州)や国内会議にて発表することを押し進めております。本年度は、M2諸君がボストンにて発表を行っております。その他、季節ごとに様々な研究室行事を行っております。

プロフィール

高 橋 英 志

エネルギー環境コース/大学院環境科学研究科 先進社会環境学専攻 教授

平成2年3月 宮城県仙台第一高等学校卒業

平成6年3月 東北大学工学部卒業

平成8年3月 東北大学大学院工学研究科博士課程前期2年の課程修了

平成11年3月 東北大学大学院工学研究科博士課程後期3年の課程修了

平成11年4月~平成11年12月 東北大学素材工学研究所教務技官

平成12年4月~平成14年9月 東北大学金属材料研究所助手

平成14年10月~平成17年8月 東北大学多元物質科学研究所助手

平成17年9月~平成18年9月 東北大学大学院環境科学研究科助手

平成18年10月~平成22年3月 東北大学大学院環境科学研究科講師

平成22年4月~平成31年3月 東北大学大学院環境科学研究科准教授

平成31年4月~現在 東北大学大学院環境科学研究科教授

Laboratory Website:https://web.tohoku.ac.jp/nano-eco/index.html