“環境の世紀”において、地球と共に生きる技術を探究する。

エネルギー環境コース / 教員

土屋 範芳


2023.04.07

“環境の世紀”において、地球と共に生きる技術を探究する。

地球科学を専門とする私は、これまで様々な辺境をフィールドワークで巡ってきました。「その中で最も印象に残っている場所は?」と問われたならば、一も二もなく「南極」と答えます。日本から14,000km離れた当地には、南極地域観測隊の一員、また調査隊隊長として、三度訪れる機会を得ました。氷点下30℃のテント生活で体感した極限の世界、そこで目にした光景は、感動という言葉がおよそ陳腐に感じられるほど、心を震わせるものがありました。地球最古の岩石を含む南極大陸と降り積もる雪が堆積した3000mに達する大陸氷床は、地球の記憶の保管庫です。こうした人間の時間軸とは異なる、地質学的スパンへの理解と視点は、私たちの研究には不可欠なものです。


地球は“水の惑星”といわれます。宇宙から見た青々とした地球や、水の大循環(蒸発-雲の形成-降水-地表流-海)を思い浮かべる方もいるかもしれませんね。しかし、こうした表層環境だけではなく、地球のマントルにも相当量の水が含まれていることが、近年明らかになってきました。地震発生や火山爆発といった地球のダイナミクスも、この水の影響を考えることで解明が進むと期待されます。本学の工学部で唯一、地質系を標榜する私たちは、岩石と流体の相互作用による挙動を解明し、工学的に活用する研究を進めています。それは東日本大震災以降、持続可能なエネルギーとして再評価されている地熱エネルギーの探査であり、さらに深部の高温高圧岩体(超臨界地熱貯留層)を利用した未来型地殻エネルギーの探究です。


私たちの研究は、フィールドに出て“地球”を感じることから始まります。そこで得た調査結果や情報を室内実験/シミュレーションへと反映させ、地球物質・活動の真の姿を理解することにつなげています。人類と地球との調和ある共存、共生に向けた模索と試みが続く“環境の世紀”において、私たちにできることは何か、自問し続けていきたいと思います。

プロフィール

土屋 範芳

大学院 環境科学研究科 客員教授

Laboratory Website:https://geo.kankyo.tohoku.ac.jp/ier/