目では見えない存在のもたらす多彩な現象を駆使して未来を拓く。

量子サイエンスコース / 教員

松山 成男


2023.04.07

目では見えない存在のもたらす多彩な現象を駆使して未来を拓く。

1895年11月8日の夕方、W.C.レントゲン博士は実験中に「分厚い物体も通り抜ける」不思議な光を偶然見つけ、これを数学記号の「未知の数 x」を引用して「エックス線」と名付けました。その名前の由来が示すように、当時はエックス線を始めとする“放射線”は「未知の存在」だったわけですが、100年後の現在では既知のものとして自由に操り、その不思議な特性を活用することが可能になっています。私たちの研究チームでは、その新しい技術の開発と応用手法の研究を行っています。その主な舞台となるのが分厚いコンクリート造りの建物、“粒子加速器”施設です。一言で言えば、粒子加速器とは“人工的に放射線を発生させる装置”です。自然界には多くの放射線が飛び交いますが、その種類やエネルギー、進行方向は全くのバラバラで有効活用することは不可能です。粒子加速器では、その特徴がピッタリとそろった“混じり気の無い放射線のビーム”を作り出すことができます。私たちの施設では原子核(粒子)の1つ1つに450万ボルトという高電圧でエネルギーを与えて“粒子ビーム”を作り出し、さらに、その太さを1ミクロン以下に収束させ、数十ミクロンの領域を自在になぞることが可能です。

これらの粒子が物質に照射された際には多彩でユニークな反応が生じます。例えば、近年、日本がアジアで初めて新元素・ニホニウムを発見したことがニュースになりましたが、これを生み出したのは粒子ビームが起こす“核反応現象”です。また、その他の多彩な反応を計測することで物質の本質を正確に知ることができます。この技術は「私たちはどう生まれたか」を解明する生命科学や「この世界はどのように成り立っているか」を問う宇宙論など最先端科学の研究に用いられるほか、新しい医療技術の実現や宇宙産業を始めとする様々な産業の発展に大いに貢献するものであり、私たちもこれらの広い視野にもとづいて日々研究に励んでいます。

プロフィール

松山 成男

大学院工学研究科 量子エネルギー工学専攻 教授

Laboratory Website:http://www.qse.tohoku.ac.jp/lab/sepb/