生体親和性を追求してスマート医療デバイスを生み出す

機械・医工学コース / 教員

西澤 松彦


2023.04.07

生体親和性を追求してスマート医療デバイスを生み出す

超高齢化、大規模災害、さらにコロナ禍を通して、高効率・低コストな医療システムの構築が急務となり、遠隔セルフ医療の鍵を握るウェアラブル型および体内埋め込み型のデバイス開発が、全世界の英知を結集して進められています。リストバンド型、眼鏡型、コンタクトレンズ型・・・様々なタイプのウェアラブル端末が誕生し、日々の活動情報や健康情報のモニタリングが可能になろうとしています。一方で、埋め込み型デバイスによる投薬や生体機能の補完の研究が進み、生体と電気デバイスを融合するサイボーグ工学の進展が加速しています。

これらのバイオデバイスに共通のキーワードは、生体と人工物を接合するための「生体親和性の工学」です。金属やプラスチックは、脳・筋肉や皮膚などの生体組織に比べるとケタ違いに硬くて一体化が困難です。また、水分が苦手な電子デバイスに対して、生体はイオン駆動のウェットシステムです。このような物質の差異「ハード↔ソフト、ドライ↔ウェット」、およびメカニズムの差異「電子駆動↔イオン駆動・分子駆動」を解消する生体親和性の工学が、生体と人工デバイスを構造的・機能的に無理なく融合するために必要なのです。

我々の研究室では、柔らかいウェットな有機材料を使って、生体に馴染むバイオデバイスを開発しています。例えば、ハイドロゲルで造る脳波電極は、70%以上が水分なので、しっとりと脳の表面に貼り付き、従来品(シリコーンゴム製)のように脳を圧迫する心配がありません。酵素を利用して造るバイオ電池の開発も進めています。皮膚に貼り付けるパッチ型のバイオ電池は、糖分と酸素から発電し、皮膚にイオンの流れを生み出して、傷の治りを速めたり、薬や美容成分の浸透を促進する効果を示しました。このような生体親和性に優れるバイオデバイスの実現を更に充実させて、遠隔セルフ医療が行き渡った安心で健康なスマート社会の実現に貢献したいと考えています。

プロフィール

西澤 松彦

大学院 工学研究科 ファインメカニクス専攻 教授

Laboratory Website:http://www.biomems.mech.tohoku.ac.jp/index_j.html