研究室で培った課題抽出能力、課題解決能力が現職でも役立っています

機械・医工学コース / 卒業生

渡邉 慎也


2024.04.17

研究室で培った課題抽出能力、課題解決能力が現職でも役立っています

東北大学機械知能・航空工学科からさまざまな声をお届けするウェブマガジン〝ViEWi〟。今回は在学中に田中(真)・奥山研究室で学び、現在はオリンパス株式会社で活躍される渡邉 慎也さんにお話をうかがいました。

——機械知能・航空工学科から医工学研究科へ進み、現在はオリンパス株式会社にお勤めされています。どのような業務をなさっていますか?

医療機器の開発技術職です。医療機器の設計開発・検討及び、各国の法律に基づいた試験・申請業務を主に担当しています。テクノロジーで医療を発展させ、人々の健康保持や人命救助に貢献したいと考え、志望しました。

会社にて。向かって左が渡邉さん

——田中(真)・奥山研究室在籍中の研究テーマ、当時の学業や研究における関心事を教えて下さい。

「ヒトが指で対象物を触れた際の硬さ知覚メカニズムの解明に関する研究」をテーマにしていました。まず学業において、私は学部では工学を学び、修士課程では医工学研究科で医学も学びました。双方を学ぶことができる大学は日本でも数少なく、とても有意義な学生生活でした。続いて研究において、硬さの知覚メカニズムが解明されれば、医療やエンターテインメントなど幅広い分野で応用可能と考え、強く関心を持ちながら研究をしていました。硬さの感じ方は、同じ硬度の材料でも、表面の加工や触り方等によって変わることがあり非常に複雑です。未だにヒトの触感に関するメカニズムは解明されていないことが多いです。しかし、今後も研究が進み、ロボット手術時に術者が組織の硬さを感じることができ、手技が増えることで救われる命が増えたり、ゲームや映画で触感を感じることができたりする時代が来る可能性を考えると期待が膨らみます。

在学中、研究室での様子

——研究室ではどのように研究を進めていましたか? また、当時の研究室の様子や他の学生さんとの関わりなどを教えて下さい。

田中(真)・奧山研究室では、複数の研究テーマ候補から各自が1つ選択し、研究を進めるというシステムでした。どのようなアプローチで研究を進めるかは自分次第で、比較的自由に研究を進めることができました。課題抽出能力、課題解決能力をそこで磨くことができたと感じています。比較的自由とはいっても、ゼミが週に1回あり、同期や先輩・後輩の研究の進捗をお互いに確認し、研究に対して先生方も含めてアドバイスし合う機会がありました。また、ゼミ以外にも研究室内の学生で実施する勉強会があり、研究に使用する機器や医学知識を深める機会もありました。そのため、自分の研究テーマに一人で悩むということはなく、常日頃から学生間で協力し合える環境でした。また、研究が行き詰まった際には、先生方のもとに行くと、講義後の遅い時間になっても親身に相談に乗ってくださり、大変感謝しております。研究以外の部分でも、芋煮会やハラコ飯パーティー等、親睦を深めるイベントが多くあり、研究室メンバーの仲は、数ある研究室の中でも随一だったと思います。特に、同期とは研究の話はもちろんのこと、研究で煮詰まった時には一緒に大学の体育館でバスケをしたり、近くのゴルフ練習場でゴルフをしたりと、とても楽しく研究生活を送ることができて良い思い出となっています。

秋の風物詩、恒例の芋煮会

——研究の他に、熱意を持って取り組んでいたこと、印象に残っている思い出などがありましたら教えて頂けますか?

学部2年生の時に、カリフォルニア大学に短期留学したことが印象に残っています。ホームステイで、語学習得や多文化理解のための講義と施設見学がメインのプログラムでした。講義課題に加え、現地学生と毎日のように観光したり、イベントに参加したりと、寝る間も惜しんで充実した時間を過ごしました。当時の現地学生とは社会人になった今も連絡を取り合っており、一生ものの財産となっています。留学後の学生生活では、スポーツをしながら国際交流をする仙台市内のコミュニティに参加し、異文化交流を続けるなど、留学経験はその後の語学習得や学生生活にとても影響を与えました。東北大学の機械系学生でも参加可能な留学プログラムは複数あり、大学のサポートも充実しているため、留学に興味がある方はぜひ活用してチャレンジしてみてください。

学部2年時にはカリフォルニア大学へ短期留学も行った

——在学中に身につけ、現職で役立てている技術・技能的スキルがあれば教えて下さい。また大学での研究や学生生活は社会でどのように役立っているでしょうか?

現職において役立てている、在学中に身につけたスキルは、研究の進め方でも述べた課題抽出能力・課題解決能力です。研究では、仮説を立てて実験をし、結果を得て考察をするというサイクルを何回も繰り返しました。その中で、何が仮説通りで、何が仮説通りでなかったか、そしてその要因・課題は何なのかを考え、次の実験や調査でそれらを解明・解決していく必要がありました。まず前者の要因・課題を考えるのが課題抽出能力になります。課題抽出には、良い結果だけを想定して実験をするのではなく、予め失敗も含めたあらゆる結果パターンを想定して実験条件を選定しておくということが重要だということを在学中に学びました。これは社会人になっても重要な視点で、短期間で効率的な試験や検討を実施して、開発プロセスを進めていくことにとても役立っています。次に、後者の実験や調査で課題を解明・解決することが課題解決能力になります。課題解決には、多角的視点で物事を捉える必要があり、例えば似たような事象を研究した文献を調査することや、研究室のメンバーも巻き込んで思考を巡らす必要がありました。こちらも社会人になっても重要なことで、情報を収集して有識者・メンバーや上司も巻き込んで主体的に取り組むことで、迅速に課題解決していくことに役立っています。

プロフィール

渡邉 慎也

機械・医工学コース 卒業生
オリンパス株式会社 所属

趣味:バスケットボール・音楽

2009〜2012年:山梨県立吉田高校 理数科
  〜2016年:東北大学 工学部 機械知能・航空工学科
  〜2018年:東北大学 医工学研究科(田中(真)・奧山研究室)
  〜現在:オリンパス株式会社