生物が先導する“ものづくり革命”

機械システムコース / 教員

水谷 正義


2023.04.07

生物が先導する“ものづくり革命”

皆さんは「バイオミメティクス」という言葉をご存じでしょうか?日本語では「生物模倣」と言って、太古から進化を続けてきた生物や植物の構造や機能、行動などを丁寧に観察・分析し、そこから着想を得て新しい技術開発に活かす科学技術のことです。例えば“蛾の目(モスアイ)”は光を反射しないという特殊な機能を持っていますが、これにももちろんちゃんとした理由があります。実は蛾の目には数100nm程度の直径を持った円錐状の構造(モスアイ構造)が無数に存在していて、これによって無反射という機能を産み出しているのです。この機能は実際、スマートフォンやタブレット、あるいは道路標識など、皆さんの身近なところに活用されています。それ以外にも、ハスの葉は「水をはじく」という機能を持っていますし、サメの肌は「流体抵抗を減らす」機能を持っているなど、生物たちはその進化に合わせて非常にユニークな機能を身につけているわけです。

では生物の持つ機能の鍵になるのは何でしょうか?その秘密は表面に存在する非常に小さい構造です。先ほど紹介したハスの葉もサメの肌もこうした構造を持っており、それが機能を発現させているのです。つまり、表面に微細な三次元構造が存在することによって、その生物が持つ機能を飛躍的に向上させる、あるいは今までに持ちえなかった機能を持たせることが可能になるわけです。

私たちの研究室では、こうした生物が産み出す最先端の機能を“ものづくり”に活かすという研究を進めています。従来の「図面通りにものをつくる」というだけでなく、それにプラスαのエッセンスを加えること、つまり、ものづくりの中に「バイオミメティクス」の考え方を導入して、創られた製品の表面に生物からヒントを得た特殊な構造を創り「機能」を与えるようなものづくりにチャレンジしています。今まさに道の途中、日本のお家芸と言われる“ものづくり”に革命を起こしましょう!

プロフィール

水谷 正義

東北大学グリーン未来創造機構
グリーンクロステック研究センター
(兼)大学院工学研究科 機械機能創成専攻
(兼)大学院医工学研究科 医療機器創生医工学講座 教授

Laboratory Website:https://mmlab.mech.tohoku.ac.jp/