ミクロな機械が切り拓く次世代医療

機械・医工学コース / 教員

芳賀 洋一


2023.04.03

ミクロな機械が切り拓く次世代医療

SF小説や映画、漫画などで「小さくなって身体の中に入り込み体内から精密な検査や治療を行う」様子が描かれることがあります。縮小する技術が無くても小さく高機能な医療機械を開発しバーチャルリアリティ技術などを利用し、まるで体内に入り込んだかのような没入感のなかで体外から体内の機械を操作し精密で安全な治療を行うことは今後十数年で実現できると思われます。この実現に欠かせない技術として小型で精密計測や多機能化が実現でき量産も可能とするMEMS(微小電気機械システム)技術があります。既にMEMS技術による慣性力センサ、圧センサなどが車、ゲーム機、スマートフォンなどへ搭載されていますが、医療、ヘルスケアへの本格的な応用がこれから始まると期待されており、数年後の実用を目指した機器開発、長期目的のために今後に役立つ作製技術を開発、蓄積することを行っています。以下に開発例を示します。

高機能、多機能な低侵襲医療機器の開発:内視鏡やカテーテルなど細い医療機器を体内に挿し入れ手術に匹敵する検査・治療を行う低侵襲医療機器の更なる高機能化、新機能搭載を目指し、極細径圧力センサ、超音波センサ、さらにアクチュエータを用いた自ら動く機器を開発しています。

体表から生体計測・治療を行う機器の開発:体表から血行動態およびストレス反応を計測する装置、鍼灸鍼に流路を作製し皮下組織液を採取し採血せずに生体成分を連続計測するシステム、超音波経穴刺激装置、体表から生細胞を数時間ごと採取しタンパク発現の時間変化を捉えるデバイスなどを開発しています。

非平面MEMS加工、実装技術の開発:体内挿入に適したチューブ形状などに適した新たなMEMS加工技術および実装技術の開発、それに必要な装置開発を行っています。マイクロセンサを搭載した臓器モデルの開発:医師の手術訓練および、医療機器開発の際の安全性や有効性評価に役立つ、マイクロセンサを搭載した今までにない臓器モデルの開発を行っています。

プロフィール

芳賀 洋一

大学院 医工学研究科 医工学専攻

(兼)大学院工学研究科 ロボティクス専攻 教授

Laboratory Website:http://www.medmems.bme.tohoku.ac.jp/