自ら動くことがないロボットが拓く新しい人間支援のかたち

ロボティクスコース / 教員

平田 泰久


2023.04.07

自ら動くことがないロボットが拓く新しい人間支援のかたち

最近、健康寿命という言葉をよく聞きます。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されており、2016年の日本人の健康寿命は男性72.14歳、女性は74.79歳との報告があります。平均寿命と健康寿命との差を見ると、男性8.84年、女性12.35年と長期間「健康でない期間」を過ごすことになります。誰もが不健康になりたいとは思いませんが、たとえ体に何らかの障害を持ったとしても、日常生活が制限されない、もしくは多少の制限はあっても生き生きと生活することができることが重要です。我々の研究室では、人が自らの力で生活し、意欲的な活動を支援するロボットの開発を目指しています。

その中の一つが人を支援する非駆動型ロボットです。このロボットはモータなどの駆動力を極力使わず、基本的に人の力のみで動かされます。人が少し助けて欲しい、もしくは危険な状態にあるというときだけ支援を行うロボットです。これにより、人はロボットに常に助けられているわけではなく、自ら主体的に運動していると感じます。たとえ体の部位に障害があっても運動をあきらめることなく、自らの意欲的な活動を後押しできるロボットを開発したいと考えています。

我々は、高齢者や障がい者の日常生活の支援だけでなく、下肢に障害を持ったダンサーを支援するという、より活動的かつ芸術的な分野での人間支援ロボット開発もフランスの大学と共同で行っております。また、人が主体的に動くということを前提に、人が移動すべき方向のみを教示するハプティックデバイス(振動呈示装置)を用いて、人にスポーツを教えるという技術の研究も進めており、この技術が確立できれば、高齢者や障がい者だけでなく健常者も、楽しくかつ上手にスポーツを楽しむことが可能となります。

ロボットやハプティックデバイスの研究開発を通して、人がいつまでも生き生きと活動できる社会を創りたいと考えています。

プロフィール

平田 泰久

大学院 工学研究科 ロボティクス専攻 教授

Laboratory Website:https://srd.mech.tohoku.ac.jp/