光学迷彩も夢じゃない 光を自在に操るナノマイクロ・ロボティクス

ロボティクスコース / 教員

金森 義明


2023.04.07

光学迷彩も夢じゃない 光を自在に操るナノマイクロ・ロボティクス

命を育む、暮らしを豊かにする、産業を発展させる。あらゆる場面で光技術は欠かせません。紀元前から、私たちは自然界に存在する様々な物質を巧みに加工して、光を操る様々な道具を発明してきました。現代の最先端微細加工テクノロジーを使うと、自然界に存在しない人工光学物質を創り出すことが可能となり、光の常識が変わるかもしれません。

当研究室では光を自在に操るためのナノマイクロ・ロボティクス(ナノ・マイクロスケールの構造・アクチュエータ・センサに関する工学や微細加工技術)を研究することで、世の中にまだ存在しない新しい光の材料(メタマテリアル)の実現を目指しています。例えば、光は屈折によって進行方向が変わるため、レンズ、プリズム、光ファイバ等の機器に応用されていますよね。しかし、物質の屈折率は決まっているため、その範囲内でしか屈折で光を制御することができません。メタマテリアルを使って、この屈折を自由自在に操ることができれば、光学迷彩や透明マントも理論上作ることが可能です。これは単に、フィクションで描かれた技術を実現するだけでなく、皆さんの生活に欠かせないスマートフォンの電波が届かないところに電波を迂回させて届かせるとか、自動車の死角をなくすなど、安全で快適な社会を実現する、魅力的な研究につながります。

また、真夏の炎天下、自動車の車内温度が非常に高くなり危険を感じたことはありませんか?多くの熱は窓から侵入します。可視光を透過し、熱線だけを反射するメタマテリアルでガラス窓を作ることができれば、このような社会課題を解決することもできるでしょう。

更に当研究室では、バイオミメティクス(生物模倣)光学の研究も行っています。クジャクの鮮やかな羽根の色を模倣した構造色利用カラーフィルタや、蛾の眼を模倣した無反射構造を実現し、太陽電池やLEDの効率を向上させることに成功しています。エネルギー・環境問題の課題解決に寄与しています。

プロフィール

金森 義明

大学院 工学研究科 ロボティクス専攻 教授

Laboratory Website:https://web.tohoku.ac.jp/kanamori/index.html