ロボティクスコース
教員
目指すは「人間のように世界を深く理解できるAI」の実現
岡谷 貴之
2026.03.17
機械知能・航空工学科ではどのような研究ができるの? 卒業後の進路は? ——そんな声にお応えすべく、教員や卒業生のインタビューをお届けするウェブマガジン〝ViEWi〟。今回は、ロボティクスコースで学び、ものづくりの世界で知見を生かす斎田 匡男さんにお話を伺いました。
——斎田さんはロボティクスコースで小菅・平田研究室(現:平田・董研究室/田村研究室)に所属されていたそうですね。現在はどのようなお仕事をなさっていますか?
現在は、株式会社サイダ・UMSの代表取締役社長を務めております。当社は静岡県焼津市に拠点を置くものづくりメーカーです。自社ブランドの汎用旋盤VERSEC-neoの開発・製造をはじめ、精密工作機械を中心とした部品加工や装置組立を行なっています。大正10年に曾祖父が創業し、創業100周年を迎えた2021年に家業を父から受け継ぎ、代表取締役社長に就任しました。
——在学中は小菅・平田研究室で研究をされていたそうですが、当時の研究テーマや学業における関心事を教えてください。
小菅・平田研究室では、「サーボブレーキ付きキャスタ車輪を有する物体搬送システムを用いた人間とロボットとの協調搬送」をテーマに研究しました。学部から博士まで一貫して、人間生活環境において人と協調作業を行なうロボットの研究に取り組みました。
研究では、従来の能動的に駆動するシステムが、モータの誤動作によって人や周囲の環境に危害を及ぼす可能性がある点に着目し、本質的に安全な協調搬送システムの実現を目的としました。サーボモータを用いず、人の操作力とトルク制御可能なサーボブレーキによって運動を制御します。外力が加わらなければ駆動しないため、モータ駆動型のシステムに比べ安全性が高いという特徴があります。
また、キャスタは力の向きに応じて自然に向きを変える特性があり、その利便性から椅子や台車など、我々の生活空間で幅広く利用されています。この受動的な性質とブレーキ制御を組み合わせることで、機能性と本質的な安全性を兼ね備えた人協調ロボットを提案しました。

——学生さんの中には研究テーマの設定に迷う方もいらっしゃると思いますが、斎田さんはどのようにテーマを定めたのでしょうか? また研究室では、先生や他の学生さんとはどのような関わりの中で研究を進めておられましたか?
小菅・平田研究室では、先生方が提示する研究テーマの中から、各自の興味に応じてテーマを選択する形で研究を進めました。研究計画の策定については、「何を、いつまでに、どのように進めるか」といった目標設定や計画立案の多くが学生の主体性に委ねられていた点が特徴的でした。私は研究成果を国内外の学会で発表することに強い関心があったため、各学会の論文投稿締切を確認し、そこから逆算して目標を設定し、研究計画を立てて進めました。
日常的な進捗管理は、週1回の指導教員との進捗打合せと、月1回の研究室全体報告会を通じて行われ、研究成果の考察や方向性の確認、今後の進め方について助言を受けながら研究を進めました。研究室のメンバーはそれぞれ異なるテーマを担当していたため、普段は独立して研究を行っていましたが、報告会を通じて進捗を共有し、時には相談や実験の補助を行うなど、協力し合いながら進めていきました。
ロボット研究は、要件定義からハードウェア・ソフトウェア開発、シミュレーション、実機実験までを含むシステムインテグレーションです。研究テーマも多岐にわたり、各自の専門分野や知識も異なるため、課題に応じて他のメンバーと議論を重ね、協力しながら問題解決に取り組みました。

——研究はもちろんですが、他に学生生活を送る中で熱意を持って取り組んでいたこと、印象に残っている思い出はありますか?
一つは、学部1年時に「Big Band」という20人程度でジャズなどを演奏するサークル「東北大学 New Forest Jazz Orchestra」を一から立ち上げ、5年目の夏に夢であった全国大会出場を果たしたことです。設立当初は、部員集めや練習環境・部室の確保、資金調達、広報活動、イベント企画など、あらゆることをこなしました。今振り返ると、組織運営において重要な要素であるヒト・モノ・カネを獲得する経験を通じて、自分の想いを言葉にして人に伝え、それに共感してくれる仲間を増やしていくことの重要性を学びました。
二つ目は、博士課程の1年間、ミュンヘン工科大学にて研究に従事した経験です。留学中は文化の違いから苦労することも多くありましたが、特に印象に残っているのはドイツ人らしい働き方です。ONとOFFの切り替えが明確で、朝早く来て夕方にはさっと帰宅しながらも、着実に研究成果を出す同僚の姿を見て、日本の働き方が当たり前ではないと痛感しました。

——そうした中で身に着けた知識やスキルは、現在のご職業でどのように役立っているでしょうか?
大学で学んだことで最も役に立っているのは、研究内容そのものよりも、修士論文や博士論文を通じて、課題設定から検証、考察、結論に至るまでの一連のプロセスを最後までやり切った経験だと思っています。また、サークルを立ち上げ、夢に向かって粘り強く努力を続けた結果、目標を実現できたことも、現在の行動力を支える自信につながっています。これらの経験を通じて、目標に向けて手順を整理し、一つひとつ着実に取り組み、困難な状況でも最後までやり遂げる姿勢が身につき、社会に出てからの大きな財産となっています。
博士課程まで研究を続けた後、創業100年を迎えた家業を継承し、現在は中小企業の経営者を務めています。研究活動で培った問題を構造的に捉える力や、限られた情報の中で判断する姿勢は、経営判断や新規事業の検討、人材育成など、日々の意思決定に直結しています。これまでのキャリアを振り返って重要だった価値観は二つあります。一つは、自分が目指したい夢や想いを言葉にして周囲に伝え続けてきたこと、もう一つは、その言葉に共感してくれた人とのご縁が積み重なり、結果として今の人生をつないでくれたことだと思います。
斎田 匡男 Masao Saida
株式会社 サイダ・UMS 代表取締役社長
博士(工学)
趣味:サックス演奏
学歴:2004年~2008年:東北大学 工学部 機械知能・航空工学科
2008年~2010年:東北大学 工学研究科 バイオロボティスク専攻 博士課程前期
2010年~2014年:東北大学 工学研究科 バイオロボティスク専攻 博士課程後期
職歴:2010年~2011年:ミュンヘン工科大学にて研究活動に従事(Ph.D.)
2014年~2017年:株式会社 日立ハイテクノロジーズ(現:日立ハイテク)
2017年~現在 :株式会社 サイダ・UMS
2021年 :代表取締役社長に就任
ABOUT
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