マイクロ・ナノ技術で新しい医療を作る、健康になる。

機械・医工学コース / 教員

田中 徹


2023.04.07

マイクロ・ナノ技術で新しい医療を作る、健康になる。

「マイクロチップ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?大きさ数mm角、厚さ1mm以下の薄片に、数億個以上の回路や部品を作り込んだものです。回路や部品はナノ(10-9)メートルという超高精度で作られています。そのマイクロチップを使って、体内に埋め込んで機能する新しい医療装置や、身に付けて健康状態をモニタリングする装置の開発が、世界中の大学や企業で行われています。私達が研究している医工学マイクロチップもその一つです。例えば、日本をはじめとする先進諸国は高齢化が急激に進んでいます。それに伴って、医学的な治療法が確立していない網膜の病気で視力を失う人の数が増えています。その病気に対して、工学的手法で視覚を再建する「人工網膜チップ」を開発しています。

三次元集積化という新しい技術を使って、小さく高機能のイメージセンサと電気回路を作り、それを目の中に埋め込んで視覚を取り戻すものです。また、近赤外光の照射によって可視光を発生する新しい材料を、マイクロ・ナノ技術で加工して体内に埋め込み、体外から近赤外光を当てて発生する可視光で病気の診断や治療をする「アップコンバージョンデバイス」も開発しています。他にも、爪の上から脈を測る「経爪型脈波計測チップ」の開発も進めています。つけ爪にチップを組み込むので、普段の生活の邪魔になりません。心電図や血圧の計測にも利用できます。日常生活の中で自然に健康チェックができれば、病気の予防や早期発見ができます。医学部の先生や企業の方と協力して、このような新しい医療装置や健康モニタリング装置を作ることができれば、使用者のQOL(生活の質)の向上に繋がります。機械・医工学コースでは、生体の仕組みを機械に活かして医療や介護支援を革新する様々な技術を研究することができます。若い皆さんの真面目な思いが、健康で安心な社会を実現する鍵です。是非、医工学にチャレンジしてください。

プロフィール

田中 徹

機械・医工学コース 教授

Laboratory Website:http://www.lbc.mech.tohoku.ac.jp/