人類の活動圏を広げる先端的な宇宙構造物の設計を目指して

航空宇宙コース / 教員

槙原 幹十朗


2026.11.06

人類の活動圏を広げる先端的な宇宙構造物の設計を目指して

東北大学機械知能・航空工学科から最新の研究や研究室の様子をお伝えするウェブマガジン〝ViEWi〟。今回は航空宇宙コースから、宇宙構造物の研究に取り組む槙原幹十朗教授にご登場いただきます。

——まずは先生の研究分野と目下取り組んでいる研究について教えて下さい。

宇宙エレベーターや月面・火星における滞在拠点の建設など、人類の活動圏を広げる先端的な宇宙構造物の設計に取り組んでいます。理論的計算のみに頼らず、実験に基づく「応用力学」の実証的アプローチを特色とし、「テンセグリティ構造」と「宇宙トラス構造」を軸とした研究を展開しています。ロケットの打上げ制限を克服する「圧倒的な軽量化」と「優れた収納・展開性」を兼ね備えたテンセグリティ構造と、軽量かつ堅牢で柔軟な宇宙トラス構造を高次元で融合させることが私たちの目指す未来です。さらに、空気抵抗が存在しない真空空間で深刻なリスクとなる「構造物の振動問題」に対し、挙動の精緻な予測・解明から能動的な制振技術の確立までを見据えて研究を進めています。

学生と宇宙ステーションの一部を模した宇宙トラス構造物を囲んで

——なぜそのような研究に取り組んでいるのでしょう? また、先生の研究は今後どのように世の中に役立てられるでしょうか?

宇宙開発において必要不可欠でありながらトレードオフの関係にある「軽量性・収納性」と「堅牢さ・制振性」を高次元で両立させ、人類の宇宙進出を支える確固たる基盤技術を確立することが目的です。特にテンセグリティ構造の宇宙応用は先行事例が極めて少ない未開拓分野であり、学術的にも工学的にも極めて大きい意義を有しています。研究が結実すれば、未来の宇宙社会における大型構造物(軌道上の宇宙基地や宇宙エレベーター、月面拠点など)の安全かつ効率的な建設・運用が実現します。従来の構造限界を突破することで打上げコストを飛躍的に低減し、宇宙利用の可能性を大きく広げることが可能です。本成果は、人類が地球外で安全かつ持続可能な生活・社会活動を営むための基幹インフラ技術として、未来の宇宙開拓に直接貢献します。

先行実例の少ないテンセグリティ構造

——所属する学生さんにはどのようなことを求めていますか? また、研究室はどのような雰囲気でしょう?

槙原研究室の最大の特色は、「机上の計算にとどまらず、自らの手で実験を行い実証する」アプローチにあります。学生には、単に理論を学ぶだけでなく、自ら実験装置を設計・製作し、得られたデータと応用力学の理論を緻密に対比・検証するプロセスを求めています。この一連の経験を通じ、問題の本質を見極める洞察力と、複雑な工学的課題を克服できる実践的なエンジニアリング能力を身につけてほしいと考えています。海外からの留学生も多く、英語での研究活動も盛んです。

テンセグリティ構造体を前に「計算上は不可能とされたものを作り上げた喜びは大きい」と語る槙原先生

——まさに理論と実践ですね。
  ありがとうございました。

プロフィール

槙原 幹十朗  Kanjuro Makihara

工学博士 東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 教授

1998年東京大学工学部航空宇宙工学科卒業、2004年同大学院博士課程修了。同年より宇宙航空研究開発機構(JAXA/ISAS)の航空宇宙プロジェクト研究員として宇宙構造物の振動抑制技術に関する研究に従事。英国ケンブリッジ大学客員研究員を経て、2011年東北大学大学院航空宇宙工学専攻准教授、2019年より同専攻教授に就任。
現在はセミアクティブ振動抑制、自己発電型エネルギーハーベスティング、フレキシブル構造物の動力学、および宇宙デブリ問題など、多岐にわたる研究領域で精力的に活動を行っている。

Laboratory Website:槙原・原/大塚研究室