
機械・医工学コース
在学生
機械・医工学コースから医工学研究科へ——学部で得た力学の知識が研究に役立っています
大津 隆志
2024.11.14
東北大学機械知能・航空工学科から最新の研究や研究室の様子をお伝えするウェブマガジン〝ViEWi〟。今回は機械・医工学コースから、センサシステムの開発や生体計測、触覚計測を専門とする奥山武志 准教授にご登場いただきます。
——ご専門の研究分野と現在取り組まれている研究について詳しく教えて下さい。
私たちの研究室では、機械工学の知識と技術を活用して、人の「触覚」や「動作」を計測し、解析する研究に取り組んでいます。特に手指の機能に注目した研究を多く行っています。手指は物をつかんだり操ったりする動作機能と触った物の硬さや滑らかさなどを感じる触覚機能を持ち、様々な専門的な手技に活用されています。例えば、医療福祉分野においては、触診や治療機器の巧みな操作などの高度な手技に手指の機能が不可欠です。私たちは、これらの手技がどのように行われ、何が重要なのかを理解したいと考え、手指の動作や感覚を測るシステムやその解析方法について研究しています。これまで、触診時の指の動きや力加減を解析する研究、助産師の分娩介助時の手にかかる力を解析する研究などに取り組み、熟練者の動作の特徴を見出してきました。
ここでは、現在取り組んでいる研究をひとつ紹介したいと思います。手技の解析に不可欠な指先にかかる力を計測するユニークなセンサシステムの開発についてです。一般的に指先にかかる力を測るためには、指先や力を加えている物体に直接センサを取り付ける必要があります。しかし、私たちは指先や物体に直接センサを取り付けない全く新しい方法を開発しています。それは、指の根元に特殊な指輪を取り付けるという方法です。この指輪には、指を曲げるための筋肉につながる腱にかかる力を計測する工夫がされています。私たちは、この指輪で計測されるデータと実際に指先にかかる力との関係を材料力学や解剖学などを利用して明らかにし、その上で指先にかかる力の計算方法を研究しています。さらに、最近注目されている機械学習を活用した計算方法の研究にも取り組んでいます。
——先生の研究は今後どのように世の中に役立てられるでしょうか?
私たちは、普段から何気なく手指を使っていますが、その裏側では非常に複雑な処理が行われています。高度で熟練した技になれば、より繊細な触覚と緻密な動きが必要とされます。どういった動きが必要なのかを知ることが高度な技能を効果的に修得するために不可欠です。しかし、動きを測る従来のセンサは、時に繊細な触覚や自然な動きを妨げてしまう可能性がありました。そこで、私たちは、本来の動きの重要な情報を正確に捉えるために、触覚や動きに極力影響を与えないセンサを開発したいと思い、力を測る指輪型のセンサの研究に取り組んでいます。
この研究により、触覚や動きに極力影響を与えず、さりげなく力加減を知ることができれば、高度な手技のトレーニングを効率的に行うことができるようになります。例えば、医療分野では、カテーテル治療などの医療従事者が行う高度な手技のトレーニングに役立ちます。さらに、様々な技能をロボットに再現するための基礎データとなり、誰もが安心して安全で質の高い医療やサービスを受けられる社会の実現に貢献できると信じています。
——所属する学生さんにはどのようなことを求めていますか? また、研究室はどのような雰囲気ですか?
私たちの研究では、計測システムの設計や製作から、それを用いた実験、集めたデータの解析、そして解析や制御に必要なプログラムの作成まで、幅広い知識が必要となります。新しい知識や技術を学ぶことに意欲的な学生さんを歓迎します。また、研究室のみんなでスポーツを楽しんだり、食事会をしたりして、和気あいあいとした雰囲気の中で研究に取り組んでいます。
奥山武志
ロボティクス専攻 医工学研究科連携講座(医療福祉工学研究分野)准教授
奈良県出身。名古屋大学工学部卒業。東北大学工学研究科修了。形状記憶合金の生体応用や変形挙動のモデル化の研究に取り組み、博士(工学)を取得。その後、電力中央研究所にて協力研究員として、非破壊検査の研究に従事。2007年に東北大学助教。2015年より同准教授。現在に至る。専門はセンサシステムの開発、生体計測、触覚計測。現在は、引掻き動作計測、筋活動評価、手指動作の解析、触知覚メカニズムの解明などの研究に従事。
Laboratory Website:https://sites.google.com/view/tohoku-mech-mwel/
ABOUT
ミライをつくる、
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ViEWi(ビューウィー)は、東北大学工学部機械知能・航空工学科の「人」にフォーカスした情報を発信するウェブマガジンサイトです。研究者の視点や物事の考え方、研究内容を発信したり、卒業生や在学生の現在の取り組みや今後の展望などを発信していきます。