
量子サイエンスコース
教員
目では見えない存在のもたらす多彩な現象を駆使して未来を拓く。
松山 成男
2023.04.07
“夢のエネルギー源”というカッコつきで語られる技術の1つに「核融合炉」があります。アニメやSF小説、映画といったフィクションの世界では、動力源として使われていたりしますが、現実の世界では、核融合炉はとても難しい巨大科学として、私たち研究者の前に立ちはだかっています。
核融合炉は、原子核融合という現象を利用してエネルギーを作ります。恒星が光り輝く仕組みも同じであるため、核融合炉には「地球上の太陽」という輝かしいキャッチフレーズが付いています。生み出されるエネルギー量が膨大なうえに、二酸化炭素を排出しない、核分裂炉で使われるようなウランを利用しないため高レベル放射性廃棄物を出さない、などの多くの利点があります。核融合炉の技術的課顆の筆頭に挙げられるのが、1億度以上になる超高温・高圧の反応プラズマの磁場による閉じ込めです。この超高温プラズマを閉じ込める設計方式の1つが「トカマク型」であり、現在、ITER国際熱核融合実験炉(フランス)において、国際協力の下(※2013年12月、東北大学は日本の大学では初となる学術交流協定を締結)、世界の英知を集めた研究開発が行われています。一方、トカマク型よりも複雑な設計が要求されるものの、プラズマを安定的に閉じ込める磁場を作れる装置が「ヘリカル型」で、これは日本の核融合科学研究所と国内大学の協働によって、世界をリードする取り組みが進められています。このヘリカル型の鍵となる要素技術が、高温超伝導導体です。私たちの研究チームは、最大電流10万アンペアという高温超伝導導体の製作に成功。これは前述のITERで使われている低温超伝導導体の電流値6万8千アンペアを大きく上回る性能です。
未米技術には、前例もマニュアルもありません。実現のために必要なのは、革新(に挑む勇気)と確信(を抱き続ける心)、科学への敬意です。”夢をユメで終わらせないための”私たちの挑戦は続きます。
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ミライをつくる、
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ViEWi(ビューウィー)は、東北大学工学部機械知能・航空工学科の「人」にフォーカスした情報を発信するウェブマガジンサイトです。研究者の視点や物事の考え方、研究内容を発信したり、卒業生や在学生の現在の取り組みや今後の展望などを発信していきます。